地下鉄南北線を白金台駅で降り、プラチナ通りから一本それた路地に入る。
高級住宅地にポツンポツンとお洒落そうな飲食店が散見される。
駅から5分ほど歩いて、この日の目当ての店の赤い看板を見つける。
令和元年、牛丼夫婦の背伸び忘年会の舞台は「ロマンティコ」である。
我々が普段なかなか来れないようなクラスのレストランだから、
諸々困らないように下調べをしている。
事前情報では、店が一人の男性のみによって切り盛りされていて、
主人であるこの男性が寡黙でコミュニケーションがとりづらく、
場合によっては不愉快な思いをして帰る客もいるという。
この日はカウンターに7席のみが設けられている。
18時過ぎの入店で、3人組家族客が先客としている。
我々はカウンター中央の2席に導かれる。
メニューを渡され、おまかせにするのが本当はいいのかも、とも思ったが、
前菜のトリッパやメインのシャラン鴨など妻が苦手とする食材もあるため、
アラカルトで注文することにする。
「前菜二品、パスタ二品、メイン一品くらいでちょうどいいんですか?」
「いいと思います。」
まずはグラスのプロセッコで乾杯。
前菜一品目は『活け〆め穴子』フリットを選ぶ。
トマトやチコリ、バジルソースの上に穴子のフリットがのせられる。
妻曰く、「これは普通だね。」
直後にパンがバターとともに出される。
ここで私はグラス白ワイン(ハウスワイン)へ。
シャルドネと思われるが、飲み応えは深くも浅くもない感じ。
果実味も含め、いい意味で中くらいな感じだ。
妻も若干遅れて白ワインへと追いかけてくる。
二品目は『あんこう』のソテー(正確な料理名は不明)。
野菜や豆などの付け合わせの上にあんこうがのり、トマトのソースがかかる。
あんこうの身はプリっとして噛んだ際に心地よい食感が残る。
上にかかる素揚げされた葉っぱが香ばしくて、主人に聞くと、
「黒キャベツというイタリアの野菜です」と言われる。
続いて、パスタ一品目は
卵黄で打った『タヤリン』ニンニクと唐辛子、少しのバターだ。
タヤリンはタリオリーニのことでピエモンテ州ではタヤリンと呼ばれる。
シンプルなペペロンチーノで、パルミジャーノがふんだんにかかる。
底にひとかけ残った唐辛子をかじると強烈に辛い。
パスタ二品目は『トロフィエ』バジリコペースト。
トロフィエはリグーリア州由来というねじれたショートパスタだ。
こちらも具のないシンプルなパスタ料理だが、味わいは豊かだ。
いったい何が加わっているのだろうと思うが、主人には聞かなかった。
メインの前にグラス赤ワイン(ハウスワイン)を注文する。
これが、ハウスワインと思えぬ凝縮感、樽香、飲み応えだ。
グラスでこれを飲めるのなら、我々には十分。
二種目のパンが出された後・・・
メインは『バスク・キントア豚肩ロース』キャベツの葉包み。
マッシュポテトの上にのせられ、芋のチップが添えられている。
ナイフで切ってみると、煮込まれ豚肉は繊維がほろほろに崩れている。
まるでほほ肉のようだ。
味つけは詳細は分からないが、塩加減も濃くなく上品な味わいだ。
せっかくだからデザートを食べるつもりでいたが、お腹いっぱいで断念。
普通のコーヒーを注文して、終了である。
料金は二人で21,200円、支払いは現金のみとなっている。
下調べのせいか、まったくストレスなく過ごすことができた。
注文や声掛けは主人が近寄ってきたり皿を下げるときにすればいい。
他の客は注文や声掛けを主人に無視されているシーンが幾度かあったが、
要は間が悪いのと偉そうな態度が受け入れられないのだ。
場違いな牛丼夫婦でも心地よい時間を得ることができたのである。
また来ることができたらいいなぁ、と思う。
ロマンティコ (イタリアン / 白金台駅、目黒駅、高輪台駅)
夜総合点★★★☆☆ 3.8