土曜の今日は休日出勤で十条に来ている。
三十年ほど前に仕事でよく来たが、その頃からいい飲食店が多い街だった。
仕事を終え、名物からし焼きでも食べて帰ろうか、と駅まで歩いていると、
バス通り沿いに「とんかつ 水泉」という店を見つける。
店頭の“テレビで何度も紹介されている”という表示よりは、
“かつ重大サービス500円”の表示に惹かれた。
午前11時5分、開店時間は午前11時からと表示されるがまだ準備中だ。
かまわずドアを開けると「中でお待ちください」という女性の声がかかる。
壁際の二人用テーブル席に座り、メニューを見る。
かつ重を食べるつもりだったが、メニューを見てしまうとどうしても、
その店の最上級のロースかつを食べないと後悔しそうに思えてくる。
上ロースカツ定食1,400円、トッピングカキ(フライ)150円を2個、
納豆150円を注文する。
店は調理を一手に行う女性とカウンターの端の席に佇む高齢の女性、
配膳だけを行うほかはずっとスマホを見ている男性の三人で営まれている。
卓上にはとんかつソース、醤油、ウスターソース、食卓塩、
一味唐辛子が置かれる。
中身が無くなりかけている瓶があり、あまり見た目はよくない。
注文から21分かかってすべてが一気に出来上がってくる。
白菜の浅漬けと、もやしとわずかな掻き玉が具の味噌汁がつく。
ご飯は少なめで注文していないがお茶碗半分程度の量だ。
(店内表示はなかったが、無料でおかわりできるとの情報もある。)
また、納豆も150円も取るわりにびっくりするほど量が少ない。
ロースカツとカキフライは同じ皿に盛られて出てくる。
少量の千切りキャベツと少量の和芥子とマカロニサラダが添えられる。
ロースカツは肉の厚みが最大2p、肉だけで190g程度のボリュームだ。
両サイドの片の断面を見ると脂身はほとんどついていない。
断面の肉の繊維が暴れていて、
生肉の段階で包丁などでかなりぶっ叩かれていることが察せられる。
いい肉を使用している場合、あまり叩くと繊維が壊れ旨味が逃げてしまう。
恐らく180度近い高温で揚げられているのだろう。
コロモの裂け目が随所に見られる。
食べてみると、やや臭みも感じ、見た目通りの味わいだった。
『町とんかつ』だからそれでいい。
まったく後悔もしないし、そういうとんかつを食べたい気分でもあった。
カキフライは笑っちゃうほど小さい。
わざわざ小さいものを選んでいるのではないかと思うほど小さい。
潮感も何も、まったくわからなかった。
ご飯が硬めに炊かれているのが良かった。
久しぶりに納豆ご飯を食べることができた。
おそらく廉価メニューの方が満足感の高い店なのだろう。
かつ重とイカフライなどを注文すべきだったのだと思う。
四の五の言ったが、こういう庶民派の町とんかつ店に来るのは楽しい。
廉価でどうやってお腹をいっぱいにするか、それがとんかつの原点だ。
通りがかりでいい店を見つけたいものだ。
昼総合点★★★☆☆ 3.0