自粛期間中にインド料理のテイクアウトをよく利用したため、
制限解除後もスパイシーな料理への欲望が途絶えない。
カルダモンやクローヴやフェヌグリークが夢に出てくるのである。
土曜の晩はかねてより行きたいと思っていた「アーンドラ・ダバ」に行く。
JR神田駅南口改札から徒歩1分で、予約の17時半より少々早く店に着く。
入店し、予約の名前を告げると、すぐに奥の4人用テーブル席に導かれる。
全30席の店内に先客は3人のみ、我々が滞在中の後客も男性1人のみ。
土日の神田は新橋や浜松町と同様、人出が少なく寂しい街になる。
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この店は言わずと知れた「アーンドラ・キッチン」の姉妹店である。
当時はまだ巷間で本格派のビリヤニを食べられる店が少なかった中で、
都内随一のビリヤニを出す店との評判を聞いての訪問だったが、
ビリヤニはマトン一択で、妻も私も羊肉が苦手なため注文しなかった。
このアーンドラ・ダバもグランドメニューのビリヤニはマトン一択だ。
しかし、予約時にチキンのビリヤニを注文してあるのだ。
もちろん、アーンドラ・プラデーシュ州の料理を食べさせる店だ。
南インドの範囲は人によって考え方が様々だ。
異質な文化のゴア州やちょっと遠方の離島を加えたり加えなかったり。
一言で南インド料理と言っても地域によってさまざまな特色がある。
アーンドラ・プラデーシュ州には北インドのタンドール料理があったり、
歴史的な背景からイスラム圏の食文化の影響も受けているのだという。
南インドと言われる地域の中では独特な食文化を形成している。
いや、ゴアもケララもバンガロールもみんな独特なのだけれど・・・。
ドリンクはGROVERのLa Reserveを注文したが無く、SULAのシラーズを。
これが4,000円とは、ちょっと首をかしげてしまうのだけれど。
La Reserveは最近注文できなくなったインド料理店が多い。
生産をやめたのか、代理店が変わったのか・・・
お通しのパパドが出る。
一般的なものより薄くて目が細かく、スパイシーでない。
さて、料理一品目はアーンドラ・オニオンチーズドーサ1,290円だ。
生地にチーズ、粗みじん切りのオニオン、パプリカ、ピーマンがのせられ、
クミンやマスタードシードなどが散らされ、焼き上げられている。
生地がしっとりとしていて、なかなかボリューム感がある。
ココナッツチャトニー、サンバル、トマトチャトニーがつく。
いずれもそこそこ辛く、それ単体で食べてもなかなかの味わい。
二品目はチェティナード・チキン・フライ1,290円が出てくる。
チキンと玉ねぎなどがスパイスでマリネされ、炒められている。
ひと口食べれば、コリアンダーの強い香りが飛び込んでくる。
ドライタイプのチキンカレーをワインのつまみにしている感じだ。
ここでカレーを二品注文する。
一品目はシェフ特製チキンカレー1,350円だ。
骨付きのチキンがゴロゴロと入り、玉ねぎなどの野菜も入る。
トマトやタマリンドにブラックペッパー、クローヴ、生姜などの味が加わり、
しっかり辛いハイデラバード風のチキンカレーという感じ。
もう一品はプラウン・レモン・バター1,350円。
インド料理を食べ始めて三十数年、初めて出会った味だ。
黄色い色はターメリックだろうが、レモンの酸味が強い刺激になる。
カスリメティやカレーリーフの香りがいいアクセントになっている。
砕かれたナッツの食感もこのカレーの味の独特さを助けている。
そして待望のハイデラバード・チキン・ダム・ビリヤニ1,650円が出てくる。
バスマティとマサラを交互に重ねて蒸し上げるダム式という手法で作られる
ハイデラバードに伝わる独特のビリヤニである。
ライタとマトンスープがつく。
このマトンスープというのが特徴的で、
西洋の牛骨(獣骨)出汁スープにスパイスを加えて味を調えたような感じだ。
大きな鶏もも肉が二つ入る。
不意にカルダモンをかじると、しばらく目をつむり恍惚に陥る。
本当はダメなのだけれど、いつも通りカレーをかける。
美味いね。
バスマティのパラパラのプチっとした食感がたまらない。
正直、ビリヤニが出る前に私も妻もそこそこお腹いっぱいだった。
食べ切れなかったビリヤニを持って帰れるか店員に聞くと、
大丈夫だと言われ、丁寧に包んでくれた。
この日の会計は10,930円。
どの品も期待以上に美味かった。
退店後、神田駅構内の期間限定店で食パン一斤を買う妻の姿に心強さを覚えつつ、
お腹をさすりながら家路についた。
アーンドラ・ダバ (インド料理 / 神田駅、新日本橋駅、淡路町駅)
夜総合点★★★☆☆ 3.8