香川県に行って本場の讃岐うどんを食べてみたいという思いは意外とない。
本場の味を味わえる店は東京にはない、という声があることは承知しているが、
いずれ本場で食べる機会があってもいいかも、くらいの願望しかない。
いまは東京で勝負をしている讃岐うどん店に心を奪われている。
今日は香川県出身の人物が水天宮前駅近くで営んでいる「谷や」に行く。
開店時間の午前11時より数分早く着き、店頭のメニュー看板を眺めていると、
時間ちょうどに店主と思われる男性が出てきて開店し、店内に導き入れられる。
(画像クリックで大きくなります。)
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カウンター席に座り、卓上に置かれたメニューを見る。
まあ、もう見なくてもだいたい決まっているのだけれど。
ぶっかけ冷600円、かしわ天150円、いか天250円を注文する。
うどんは並1玉、中1.5玉、大2玉が同一料金と言われ、中を指定する。
注文したあとで背後の壁に“本日の一品”というホワイトボードのメニューを見つけ、
カキフライを追加注文しようかと迷ったが、何となくやめておく。
席の目の前に“製麺室”があり、中で男性が小麦粉の塊を足踏みして練っている。
入口近くの調理台で主人らしき男性が生地を綿棒で伸ばし麺包丁でカットしている。
もう一人の男性がうどんを茹で、天ぷらを揚げている。
打ち立て、切り立てのうどんと揚げ立ての天ぷらを提供する店であることが分かる。
そしてうどん作りは手ごね、手切りの純手打ちであることも分かる。
足踏みについては衛生面で批判の声があり、一時期香川県で禁止条例が出た。
そのため本場でもその工程を機械で行う店が現在は多いという。
私は足踏みがうどんの食感を最良にするために必須ならば仕方ないと思うが、
衛生面はともかく、最終的に食べ物になるものを地べたに置くことには抵抗がある。
注文から10分で出来上がってくる。
ぶっかけ出汁はうどんにかけられてはおらず、徳利型の陶器に入れられて出される。
そのぶっかけ出汁をうどんにかけ、まずはぶっかけ出汁だけをすすってみる。
甘み、辛み、酸味はほんの僅か、いりこ出汁の味がしっかりと主張する。
丸香のつけ出汁ほどのいりこ出汁の強さはないが、
それでも一般的な讃岐うどん店のぶっかけ出汁としてはその主張は強い部類だ。
うどんは太めでエッジ感はそこそこ。
但し食感は独特だ。
表面、外側は滑らかで当てた歯を吸い込むような独特の軟らかさを感じる。
しかし、中心部に向かってグラデーションのように徐々に歯への抵抗感が強くなる。
噛み切り際に歯が感じる不思議な弾力は他に類を見ないと言っていい。
噛み切り際に歯が感じる不思議な弾力は他に類を見ないと言っていい。
それに、いい小麦粉を使っているんだろうなあ、と思わされる味わいがある。
途中、おろし生姜を頼むと小皿で出される。
ぶっかけ出汁の味わいが変わり、堪らずぐいっと一気に飲み干す。
天ぷらはコロモがサクッとカラッと揚がり、クォリティは高いと思った。
かしわ天が鶏むね肉だったのも嬉しかった。
但し、あまりにも量が乏しく、コストパフォーマンスが低いと思った。
かしわ天つけうどんという品は1,000円でかしわ天が3個に野菜天3種がつくので、
そちらを注文すべきだったと後悔した。
天ぷらのコストパフォーマンスを除けば、満足度の高い店だと思った。
こんなうどんを食べたいとずっと願っていた、なんて退店後に思ったほどだ。
東京都内の讃岐うどんは丸香がダントツと思っていたが、
まだまだ引けを取らない良店があるのかもしれないと考え直させられた。
讃岐うどんへの興味はまだまだ尽きない。
昼総合点★★★☆☆ 3.8